昨年末の公演から、ほぼ半年経ってしまった。その間、サカモトは2度、渡韓し、芝居三昧の日々。わたしは温泉に浸かったり登山をしたり、もちろん仕事もしていたが、芝居にまつわることから離れ茫洋としていた。
ご近所の猫 近影 |
黄金週間も終盤、そろそろZORAのこと。ZORAは、一年に一回、秋冬に公演をしている。一つ公演を終え、次の準備に入る。今年は諸事情あり出遅れていたが、「えいやっ」と腰を上げた。作品を探す。これは旅の準備をするような、楽しい作業だ。
藤枝静男という作家がいた。太宰治よりひとつ年上。眼科医をしながら、病妻や夭折した兄弟を題材に作品を書いていたが、70歳近くになって『田紳有楽(でんしんゆうらく)』という傑作を生み出した。初夏の庭の様子が俯瞰で語られる冒頭から、庭の池に投げこまれた茶碗(グイ呑み)が心情を語りいつしか自力で動きだし、金魚のC子と交情をかわす。想像を超えた飛躍と人間臭さが同居している。ぶっ飛んでいて、とぼけている。
藤枝静男氏 |
荒唐無稽でありながら人間から離れず、有機も無機も同じ眼差しでとらえる感覚は新鮮で圧倒的におもしろい。藤枝静男、いい。
戯曲ではないが、この小説、あるいはこの世界観をZORAの解釈とアイデアで作品に起こしたいという思いが沸き、ふたりで声に出して読むうちに、おもしろさを確信している。このような作業を積み重ねてゆき、いつになるかわからないが、どいうふうにか、かたちにしたいと目論んでいる。