なんだかさえない日々である。
ここ数年は、両親を見送り離婚し自活しながら芝居も続け、穏やかだった暮らしが否応なく動きだし、のんびりと生きてきた人生の中では、割と必死な数年であったと思う。身辺は寂しくなったがきっぱりと一人で生きているような清々しさもあった。
昨年末の芝居を終えひとくぎりしたときは、次のことを考えていた。芝居を続けていく困難さは気合いとアイデアで乗り越えてきたし、いつもわたしたちのできる最良のことをめざしている。しかしときに途方もなく思えることもある。
震災の光景、そして小さな「なんだかうまくいかないこと」が、心身を脅かした。なにかことを起こそうとすると耳元に「トカトントン」が聞こえてくる。
先日サカモトと話した折、「やる気がでない」と口にしてしまったとき、言ったら本当になってしまう、言わなきゃよかったと思ったが、そんなときもある、と受け止めてくれた。叱咤激励されるよりも心強かった。
さて今日は重い腰をあげて…
THE・ガジラの『どん底』を観に行った。記憶にある「どん底」は暗い芝居だ。今この芝居はきついのではないかと覚悟して観た。2時間10分は確かにきつい。しかし魂が揺さぶられる作品になかなか出会えないなか、100年前のロシアでゴーリキーが吐き出すように書いた野太い言葉と、真摯な演出、そして出演者たちの覚悟に心が動いた。心の闇に沁みた。ドストエフスキー、チェーホフの言葉にもまた触れてみたくなった。
てなわけで外に出れば 人にも出会うし雨にも濡れる。
どん底にはまだはやい。