ABOUT US

1982早稲田小劇場入団
1988劇団第三エロチカ入団
2001ZORAを劇団第三エロチカ吉村、坂本で活動。
2015吉村他界。
2019ZORAを閉じる。
2021「プロジェクト榮」を、演出:俳優/篠本賢一、
舞踊家:俳優/花柳妙千鶴と活動開始。
2023「よなよな」久保庭尚子と立ち上げ。

2011年4月30日土曜日

ジャン・ジュネ(サカモト)


帰国する一日前、夜、ソウルのホテルで一人、テレビでNHKを見た。本来なら芝居を観にいくはずだったのだが、疲れを感じ、日本に帰ってからの仕事を思うと、この乳酸はこの国で落としていかねばならぬと、何やら使命感のようなものを感じてしまったのだ。シャワーを浴び、ゆっくりトランクに荷物を整理しなから、休むことにした。稽古は釜山からずっと山奥に入りテレビもない共同生活であったので、久しぶりに流れる日本語と日本の映像に懐かしさと安堵を覚えた。そしてこんなにすぐに通じるロスのなさにも何やら違和感を覚えた。旅は放浪し、また元の場所に戻る。元に戻れる場所があるからこそ、安堵感もある。けれど…

「女中たち」の作家、ジャン・ジュネ この方の言葉に触れていると、これまで肌に触れ得なかった孤独感と愛を感じ、戸惑ってしまう。さまざま事柄に関する不満も非難も、ある事象があって繰り出されるものであるが、このひとりの男には、生まれた時から拠って立つ一番大きなもの、家族がなかった。父親不明、母は恐らく娼婦であり、その母にも捨てられ、フランスの貧民救済局の施設で孤児として育てられた。愛情はもとより、飢えを満たすに足るだけの食物を与えられなかった彼は、十歳の時、終に盗みをして《泥棒》の烙印を心の底に焼き付けられる。それからは、乞食、浮浪者、男色、囚人、そして泥棒。汚辱と悪の泥沼に身を費やし、自己の精神になかに美の王宮を築き、言葉を紡いでいった。


この夏8月に、新宿タイニイアリスで「女中たち」を上演します。韓国での公演をステップに、来ていただける皆さんに何かしら感じてもらえる作品にしたいです。今年に入って、すっかり日本の芝居もご無沙汰し、人にも会っていなかったので、これから早春に向けて街に繰り出そうと思います。そうそう私、帰国しました。まずはゴールデンウィークの皮切りに久しぶりに吉村さんと新宿で雑談。そしてお次は、今回の韓国メンバー、俳優座の劉さん主宰、三鷹の「ハルピン」で餃子パ-ティ。若葉のなか、バスに揺られ楽しんでこようと思います。