ABOUT US

1982早稲田小劇場入団
1988劇団第三エロチカ入団
2001ZORAを劇団第三エロチカ吉村、坂本で活動。
2015吉村他界。
2019ZORAを閉じる。
2021「プロジェクト榮」を、演出:俳優/篠本賢一、
舞踊家:俳優/花柳妙千鶴と活動開始。
2023「よなよな」久保庭尚子と立ち上げ。

2011年3月20日日曜日

飛行(サカモト)


村上春樹さんの「ノルウェイの森」だったと思う、飛行機はハンブルグ空港に向かう機内で、ビートルズの「ノルウェイの森」を聞き、主人公「僕」は極度の混乱状態に陥る。そしてフラッシュバック形式で主人公「僕」と自殺してしまった愛する恋人、直子の昔の物語が始まるのであるこの爆発的に売れた本のせつなさに似た感覚が、今年1月、韓国に渡航する際、私に襲いかかってきた。

そんなに大げさではないから、少し恥ずかしい気もするのだけど。若かりしころ、海外公演に出向いていく時は希望に燃えて、寂しさなんてひとかけらもなかった。勿論、今も演劇的な好奇心は消えないのであるが、日本では雑多な雰囲気に覆われ、孤独感も誤魔化し時をやり過ごしていても、海外に出向くということは、私はひとりなんだという思いに気づき、自分で切り開いた家族もなく、子供も持たなかった孤独感が、誰かに愛され愛したいという渇望が、より一層自分を満たしやりきれなくさせるのだ。てな事を思っているうち、韓国は2時間で到着してしまうから、ヨーロッパ渡航とは違って、余韻に酔ってふさぎこむ時間もない。でもそのふさぎこむ時間もなぜかいとおしい気もするのだけど。だって機械じゃないのだから。

韓国から戻って、1週間もしないうちにこの非常事態に遭遇し、そしてまた今月末には、日本を離れる。愛する人を失ったとき、これまで築きあげてものを失ったとき、残されたものはどうするのか、これからどうやって生きていくのか、私にもわからない。でもきっと誰かが傍にいてくれることが、とてもおおきな励ましになるのだとは思う。ひとつづつ前へ向かって。