新国立劇場、中劇場にて、韓国を代表する劇団、劇団美醜(ミチュ)の「リア王」を観劇してきました。見応えがあり、いたく感動いたしました。「リア王」という作品がこんなにもスケールの大きい作品だと気づかせてくれた演出家に脱帽です。これまで何度となく、さまざまなリア王を見てきましたが、私にとって作品の世界感をこれほどまでに適切に打ち出してくれたリア王は、はじめてです。
作品の懐が大きい分、さまざまなリア王があってしかりです。けれどふとした時に感じる人生の虚無感というものが、この作品の重低音のようになっているようで、私も齢を重ねたぶん、それをより深く感じたのかもしれません。虚無感を提示できるということは、欲望も希望も絶望も全てが人生の皿のうえにしっかりと盛られていて、とても見やすいのです。虚無感は熱いからだがあってこそ。熱くもしないからだで、シニカルやニヒルを装っても、きっと何も感じない。
悪女を演じた、長女ゴネリル、次女リーガンの女優陣。潔かったです。若かりし頃は、悪女の役がくると、どこか自分で無理をしている部分があって辛かったのですが、今は自然にやれる気がしています。ああ、悪女がやりたいと観ながらうずうずしてしまいました。悪い役はやっぱり面白いし、欲望があるってことは生きているってことが、ビンビンと伝わってきてとても気持ちがいい。
30代の頃に出会ったシェイクスピア。マクべス夫人、タモーラ。その言葉の脈絡、響きがとても気持ちよくて、また口にしたいと思いました。いい舞台を見ると元気がでる。私も今年は、後半に3本の舞台があります。それがとても楽しみになってきました。今までになく新鮮な気持ちで、ぶつかっていけそうです。肉離れした足も完治。スポーツクラブも復帰しました。これから来る夏を乗り越え、秋からの舞台に全力を注ぎます。