眠ってたものが刺激されたのでしょうねと歯科医の先生に言われる。なんせ歯が3本おかしい。2本沁みて1本腫れてしまった。3本となるとこれが放散痛というのか・・・よくわからない。薬を飲み沈静化するのを待つ。
ミノムシの雌になりたくなくてできるだけ芝居を観に外へ出かける。吉村さんとよく二人で行っていたが今はひとり。スケジュールを相談することなく勝手に出かける。芝居に対する情熱が昔と質が違うことを日々感じながら、面白いと喜び面白くないと腐り。
時間がない中、頑張って出かけるので面白いものを確実に観たいという欲望に拍車がかかる。最近は楽しみたいし笑いたい。エンターテインメントの幅の広さに救われる気がする。テレビも昔はバラエティー番組は全然見なかったのに、最近は思わず面白い会話に引きづられひとりで笑っている。
芝居が終わって今日も下北沢だし知り合いもいるし、いつもなら芝居話に花が咲き飲んで帰るとこだけれど、薬を飲んでいるのでアルコール禁止。おかげでノンアルコールの美味しいドイツビールを発見し肝臓にもいい。歯が痛くなったのは久しぶりにスポーツクラブで踊った翌日。外へ出たらものすごい冷たい風だった。ぼんやりしてたからだに熱さと寒さが走り抜ける。
予約外で緊急に診ていただいた歯科医の先生に感謝しつつ、診療台の椅子でぼーっと仰向けに天井を眺める。パンドラの箱じゃなくてパンドラの被せものだーと心の中で叫ぶ。麻酔し長年の被せものを機械音を響かせ次々と砕いていく。出血し、銀を、虫歯を削り、膿を出す。痛いけど、何かが動きしだしている。
「この箱だけは、決して開けてはならない」
と、言っておいたのですが、パンドラはこの美しい箱を見るなり、中にはきっと素晴らしい宝物が入っていると違いないと思いました。
そこで夫に箱を開けて欲しいと頼みましたが、エピメテウスは兄との約束で、決して首を縦に振りません。
するとパンドラは、
「あなたが箱を開けてくださらなければ、わたしは死んでしまいます」
と、言い出したのです。
そこでエピメテウスは仕方なく、兄との約束を破って箱を開けてしまいました。
そのとたん、箱の中からは病気、盗み、ねたみ、憎しみ、悪だくみなどのあらゆる悪が、人間の世界に飛び散ったのです。
エピメテウスがあわててふたを閉めますと、中から弱々しい声がしました。
「わたしも、外へ出してください・・・」
「お前は、誰なの?」
パンドラが尋ねると、
「わたしは、希望です」
と、中から声が返ってきました。
実はプロメテウスが、もしもの為に箱に忍び込ませておいたのです。 こうして人間たちは、たとえどんなひどい目にあっても、希望を持つ様になったのです。