ABOUT US

1982早稲田小劇場入団
1988劇団第三エロチカ入団
2001ZORAを劇団第三エロチカ吉村、坂本で活動。
2015吉村他界。
2019ZORAを閉じる。
2021「プロジェクト榮」を、演出:俳優/篠本賢一、
舞踊家:俳優/花柳妙千鶴と活動開始。
2023「よなよな」久保庭尚子と立ち上げ。

2010年5月30日日曜日

役者(サカモト)

動けないということは、随分と人の生活を変えてしまうものだな。体力だけは自信があり、ハードスケジュールも難なくこなしていたのに、肉離れをしてからのまる2ヶ月というもの家にいることが多かったので、すっかり出不精になり家でぐうたらするようになってしまった。なんだか何をするのも億劫になり、家でテレビを見続けている。「世界遺産」を逃さず、ドラマではもう終わってしまったけれど『チェイス〜国税査察官〜』のARATA。『IRIS(アイリス)』のイ・ビョンホン。『Motherマザー』の田中裕子。役者たるものを見せつけてくれる。面白くない舞台を見た帰り道はどうしょうもなく悔しくて、こんなことが続くのなら、もう外には行かなくなってしまうかもしれないなど自棄酒を飲みたくなる。欲求不満も限界になり、水泳はいいよと先生に言われたので、この際かねてからの願望であったダイビングをはじめようとカタログを取り寄せたのだが、説明を聞きに行く当日、やっぱりやめようと思いたった。このままでは何もかもが中途半端になる、そうだ私は演劇をまっとうしなければと改めて思ったのだ。

声を出し本を読もうと思い、ある読書会に出席した。現代から明治まで、時代を遡りながら、各時代に活躍した日本の女性作家の代表的な作品を、毎月一回、一年かけて読み進めるというものだ。私は勘違いもいいところで、読書会とは朗読をするものだと思っていたら、一冊の本を既に読んできて、その本の感想、意見を交わす場であった。なんとなく気恥ずかしくどうしようかと思っていたが、それでも芥川賞までとった女性作家の小説は、女性ならではの感性が響き私は好きだった。けれど吃驚してしまった。出席者は男性が多く、それも年配の人が多かった。感想を言い出したら、面白くないの一点ばりなのである。歩みよろうという気持ちもないように思えた。世には、本当にいろいろな方がいるものだと呆然、愕然とし、その場を去った。批判的な気持ちになりながらも、実は自分にも跳ね返ってくる。仲間がいることはいいことだけど、いつもあうんの呼吸でいる生ぬるさ、そしてある意味、私も狭い世界で生きているのだとも思った。

昔から女優という響きがなぜか好きになれなかった。ジョユージョユーとからかわれて言われるときもあった。言う人に悪気はないのだが、私が勝手にこの職業だけでは生活していけない負い目に卑屈になってるだけなのだ。役者だなと感じる俳優をみる時、からだの中に電流が走る。それは男でも女でもない。理屈でもない。孤独のなかからそっと手を差し伸べてくる。

我慢の限界を超え、久しぶりにスポーツクラブで30分だけ汗を流す。私もバカだな、上半身だけ動かせばいいんだ。肺に新鮮な風が吹き込む。卑屈さも失わず、狭い括りからも解き放たれて、もっともっと役者道を進みたい。6月は衣替えの季節。部屋の掃除をしながら、体力温存。ZORAの本も、もうすぐ決まりそうです。今年は夏からダッシュしていきます。