すっぽりと氷に包まれてしまったような街。
今年もあと2日です。
震災後に作られた演劇のなかで扱われる「震災」を観るとき、難しいなと感じることが多い。避けては通れぬ思いもあるが、扱い方が中途半端であっては取り上げる意味がない。
「リクゼンタカタ」
震災後に作られた演劇のなかで扱われる「震災」を観るとき、難しいなと感じることが多い。避けては通れぬ思いもあるが、扱い方が中途半端であっては取り上げる意味がない。
「リクゼンタカタ」
演劇公演ではないが、ZORAやかもねぎショットでお世話になっている舞台監督の森下紀彦さんが、「陸前高田でいろんな公演をしよう会」を立ち上げ、下北沢スズナリで公演を行った。企画は練りきれていないようにも思ったが、森下さんの思いはストレートだ。とにかく始める、そこからなにかが生まれてくる。なにかやらなければと思いつつなにもしないのはだめなのだ。
「トロイアの女たち」
蜷川幸雄演出のギリシャ悲劇。演じるのは日本人、アラブ人、ユダヤ人の俳優たち。役者たちの母国は今も紛争の渦中にある。この作品の終盤、トロイア陥落のシーンで、原作にはない「地震が来た」という台詞があり、この叫びとともに、大地が揺れ、城壁が崩れ落ち火に包まれる。「闘い」の実感のない日本人。「地震が来た」とは日本人の立ち向かわねばならない闘いであることを示しているように思えた。揺らいだものは大地ばかりではない。そして、決壊した海を分け入り、震える膝を自ら励まし、立ち上がり歩き始めるヘカベの姿は感動的に美しい。誰かについていくのではなく、自分で切り開いていく姿。演じている白石加代子さんの生き方とも重なる。それにしても、たまにはこういう大きな物語の中の演じ手になってみたいものだ。
2012年、ZORAは『蜘蛛女のキス』に挑戦しました。本を選び、読み、考え、闘い、負けそうになるも諦めず。ひとつの作品を生み出すには時間がかかります。年に一本。わたしたちの精一杯ですが、年に一本、いい作品を生み出してゆけたら、と思います。これからも。
今年も一年ありがとうございました。
温かくして、よいお年を。