ABOUT US

1982早稲田小劇場入団
1988劇団第三エロチカ入団
2001ZORAを劇団第三エロチカ吉村、坂本で活動。
2015吉村他界。
2019ZORAを閉じる。
2021「プロジェクト榮」を、演出:俳優/篠本賢一、
舞踊家:俳優/花柳妙千鶴と活動開始。
2023「よなよな」久保庭尚子と立ち上げ。

2011年12月26日月曜日

女が壊れるとき:「シークレット・サンシャイン」(原題:밀양 ミリャン) サカモト




今年夏に、韓国の劇団コリペ、代表イ・ユンテクさんが主催する、蜜陽(ミリャン)フェスィバルに「女中たち」の公演で参加した。その時にユンテクさんに、シークレット・サンシャインという映画は、この蜜陽(ミリャン)を舞台にしているんだよと言われた。ユンテクさんの家でその映画も垣間見たのだが、日本に帰ったら見ようと思いつつそのままだった。

季節は既に冬に突入し、ビデオ屋で探している映画が見当たらずいると、シークレット・サンシャインのタイトルが目に飛び込んできた。思わず手にとり、すぐさま家で見た。ミリャンの駅が何度も写り、ああ、あそこから電車に乗りソウルへ行ったななど、懐かしい気持ちになった。最初は地味な映画なのかな~と思っていたが自然に惹きこまれていった。

女が主人公である。女が壊れていく機微を丁寧に描いてる。そしてまかり間違えば、いつか自分もそうして壊れていってしまうかもしれないという危うい気持ちが彷彿してくる。昔は自分は絶対そうはならないと思っていたが、今はもしかすれば人であるなら女であるなら、そのような可能性が自分にもあるのかもしれないと思う。主演女優をしっかり支えているソン・ガンホ。そして劇団コリペ出身の俳優の方も出演していて、より映画が迫ってきた。


そして22日、テアトルエコーの舞台、オーディオドラマ「十三なつ」(作:岡本蛍、演出:永井寛孝)を恵比寿で観て来た。2作あり、最初の「能いあがり」がとてもよかった。およしを演じた太田淑子さんの言葉の清らかさ、可愛らしさ、一途さが胸を切なくさせる。聞けば「ひみつのあっこちゃん」の声もやられていた方で、現在75才。しゃんとしていて、プロの凄みを感じさせる。やはり舞台はいいものを見ると、想像力がどこまでも羽を広げなんとも豊かな気持ちにしてくれる。


映画も舞台も主演を張れる女優はやはりいい。年の終わりにいい女優が見れてよかった。そしていい女優を見ると元気がでる。私も一歩でも近づきたい。年内、私からのブログ更新は今日が最後です。来年、新しい年に祈りをこめて。こめてこめて。またお会いしましょう!


今年最後はこの曲で!! 安全地帯 真夜中すぎの恋 

2011年12月18日日曜日

ふゆぞら。(ヨシムラ)

寒い。

色づく木々の葉をながめ、ぼんやりしている間に、街のイルミネーションが灯る。なにもなかったみたいに。なにも起こらなかったみたいに。いなくなった人も震災も忘れるわけはないけれど、時は流れていく。不安をごまかしている。収束はしない。

久々に三島由紀夫の戯曲を読み、流麗だけど簡潔、饒舌だけど単純な言葉に、よいものはよい、とむくむくイメージが膨らむ。絵画や音楽のように、感覚に直接訴える力があるのだ。尋常ではない感性と美への固執は、45歳で割腹自殺を図る狂気と紙一重なのだろうか。もはや大作家も年下である。

2001年1月、今世紀最初の舞台が三島由紀夫「近代能楽集 -班女-」で、われわれは「花子」と「実子」を演じた。花と実はそれぞれに、「私は待つ」「私は何も待たない」と言い、そうして日が暮れる。11年前と現在。心情の変化、重ねた歳月を感じつつ、さらに研ぎ澄まし、再び演じてみたく思う。

この週末は父の三回忌。忘れるわけはないけれど、少しずつ離れ遠くなってゆくのかもしれない。賑やかな法事の会食終え帰宅。手のひらをこすりあわせて温かな感覚を思い出し、目を閉じる。差し向かいに座り黙ってビールを飲む。久しぶりに。

2011年12月11日日曜日

ろうそく風呂(サカモト)



いただきもののアロマキャンドルが増え、ふと思いつきお風呂にたくさん並べ入ると、暗闇に白い湯煙がもうもうと照らし出され、幻想的な気分になる。普段、電気を点けているときには見えない煙がこんなに充満しているのかと、面白くてすっかりやみつきになってしまった。スイッチひとつで灯りを供給していたときには思いもよらず、はっとさせられる。

自分のこころが、急変した出来事についてゆけず、力を失いかけた夏の終わり、木村文洋さんの映画「へばの」を見た。そして今日で3回目、時間をおいて見た。その時は自分がセンチメンタルだったから心にフィットしたのか、確認したい気がしていたのだ。でもやはりよかった。やさしくて、沢山のことをやろうとせず、人がちゃんとそこにいる。

映画を見終わり、本郷三丁目から清澄白川に移動し、吉村さんと合流。この日の夜は、久しぶりに知り合いのソロダンスを見るためだ。けれど寒くて寒くて、ラーメンでもと店を伺って歩いているうち、森下方向に行きつき、懐かしい魚三酒場に出くわした。ここは安くて美味しくて、昔、稽古の帰りによく来た。ダンスを見る前ではあったけど、あったかい白子汁に熱燗をちびちびやりながら、からだを温め、来年のZORAの公演について話しあった。話せば出てくる。まだまだこれからだけど。

そしてダンスを見終え、家路に着く。誰もが頑張っている。でもそこからだと自分に言い聞かせる。今日一日に不思議に感謝。小さいところから始めた節電も、楽しみに変わってきた。今日もろうそく風呂に浸かり、寝よう。皆さんも、年内、どうぞ暖かくお過ごしください。

2011年12月4日日曜日

12月のこと(ヨシムラ)

December.

毎年この季節になるとZORA公演の稽古や準備で慌ただしく過ごしている。もう何年もそんなふうに年末を過ごしていた。一昨年の12月は例年よりさらに忙しく必死だった。『椅子』という手強い作品と必死で格闘していた。26日に公演が終わり、年が明けてすぐ父が亡くなった。 まさか死ぬとは思ってなくて、そのことが悔やまれる。

今年はZORAの公演はなし。充電、というより休んでいる。ときには休んで、またやるときはやる。人の存在や話に触発されたり、音楽や景色に耳や目をゆだねながら、そして日々労働しながら、ZORAを休んでいる。
 

服をたくさん捨てて、バイクを手放した。もっと軽くなりたい。いつでも旅立てるぐらいに。夜明け前の空は一瞬驚くほど青い。足音を消せば、銀杏の葉が落ちる音だけが聞こえる。

 職場近くの六義園。東京には小さな森があります、けっこう。