「単純なことだ、君は女じゃない、女優だ。君は何も気にしない。人間関係もセックスも愛も人の感情も個人的な問題も金銭も常識も、すべて忘れる。この絶対的献身が芸術をつくりだすんだ。」
この時期に、「グロリア」、「オープニング・ナイト」を再度見る事になるとは思わなかった。そして
ジョン・カサヴティスの作品でこれ迄に見ていないものも見た。新宿TSUTAYAに「フェィシズ」、「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」「ラヴ・ストリームス」VHSの在庫を見つけ、また渋谷オーディトリウムで、「こわれゆく女」「オープニング・ナイト」を観に2度ほど通った。どの作品も、決して古くない。
若かりし頃の自分はとても観念的で、言葉で自分を縛っていた。「~君は女じゃない・・・」このフレーズを演劇をはじめた頃、耳にした。女優という職業が、普通の職業とは全く違った叡智と、巫女的体感なくしてはできない神業のような気がして、とても惹かれたのである。その言葉がまさか「
オープニング・ナイト」の映画中で語られていたとは。渋谷の映画館で何十年ぶりに、この言葉に再開し、一人ぷるぷる震えがきました。
「オープニング・ナイト」は、演劇を舞台にした話。主演女優、作家、プロデューサー、スタッフ達。そして自分は端役だという男優を演じる、監督でもあるジョン・カサヴェティス。心が破綻しかけそうな主演を演じるジーナ・ローランズが、深夜、端役である男優の部屋を訪ねる。するとドアを開けた端役は「君は主演女優なのだから、端役の部屋にくるべきじゃない」と言われ入れてもらえない。女優は女じゃないと言われつつ、
何かにすがりたい女の悲しい一線が、一気に噴出された瞬間でもある。
一昔前キャリアウーマンともてはやされ、沢山の女達も上昇志向に走った。時代の波もあった。
でも女の壁に突き当たる。今の女性たちは、そんなことも軽々とくぐり抜けているのだろうか。