藤田嗣治の生誕100年を記念して「レオナール・フジタ展」が開かれ姉妹で観に行ったのがきっかけでフジタが好きになった。その後ふたりで作品展に訪れるたび、絵の横に貼られた「平野政吉美術館所蔵」の文字が気になった。調べると秋田県にある美術館らしい。「いつか平野政吉美術館へ行こう」と姉妹で約束した。あれから20数年。秋田への旅がついに実現した。
フジタ自画像
新幹線こまちで秋田へ向かう車窓は、黄金の稲穂が揺れる田園。のどかな東北の風景を眺めていると心が解けてゆくよう。秋田駅から徒歩で10分、ついに平野政吉美術館へたどり着く。
平野政吉は秋田の地主であったが、美術展でフジタに出会い、フジタとその作品に衝撃を受け、その後コレクターとなりパトロンを越えた交友を深めた。政吉は、収集したフジタ作品を展観するため美術館建設を計画、その美術館の壁画の依頼を受け制作したのが、大壁画「秋田の行事」である。あまりにも巨大で圧倒されるが、間近で見ると細部にフジタのユーモア、人々への眼差しが感じられるあたたかい作品であった。壁画を描き終えた頃、日本は戦争体制へ傾倒してゆき、美術館の開館は頓挫、ふたりの願いが叶うのはその後30年経ってからだったそうだ。
秋田の行事
しかし竿燈祭りも終わった町はどことなく物寂しく、翌日は駅の案内所で情報を仕入れ、ローカル線に乗って温泉へ行くことにする。日本海は荒波というイメージであったが、秋の海は静かに凪いでいて穏やか。秋空と美しい海を眺めながら入る露天風呂。極楽です。
両親を見送った今、唯一半世紀をともに生きて来た姉と、平和だった昭和の頃やいろいろあった平成を振り返り語り、郷土料理を堪能し地酒に酔い、すっかり心身リフレッシュの旅となりました。
道の駅 岩城からのぞむ日本海