時間ができたので、昼間、家の前の川沿いをぽかぽか陽気の中、散歩する。水面がきらきら光輝いている。鴨が川底の土の中に顔を突っ込んだり出したり、急に2本足で長立ちになり羽を震わせたり気持ちよさそうである。この日は白鷺も2羽。ところがどっこい、今日はあひるもいた。真っ白なおおきなあひる。どっから来たの?あひるって飛ぶの?この川を見ていると、いろいろなことを思いだす。
この街に引越してきた時のこと。長年勤務した保険会社を辞める決意をし、これからお金の工面をどうするか途方に暮れていたときのこと。ヘルパー1級の資格を取り病院勤務となるが、辛くてしょうがなかったこと。韓国へ行こうと決意したこと。仕事と芝居と2足の草鞋で走り続け、その時代のニーズにあった仕事をし、社会で働いてきた体験は私を鍛えさせてくれた。
未知のものに足を踏み出すことは、自分が行きたい未来の絵柄がまだ存在していないので、不安ながらも、私はすでにその域に到達しているんだと何度も言い聞かせる。前送り、先送り。やがてその不安も忘れ、ことに没頭しはじめると、不思議に未来だったはずのものが現実となって現れはじめる。誰も自分の保証人にはなってはくれないから、この川が、あんなこともあったねと、なんだか保証人のように見守ってくれている気がするのだ。
地デジ騒ぎの締め切り時に韓国にいたので、また帰国してからも、すぐに公演に追われテレビを見る時間もなく、チューナーは買ってあったのだけれど、封も開けずそのまま置き去り。おかげで、テレビを見なくなってしまった。最初は寂しかったのだが、次第に慣れ、部屋にいるときは音楽だけ聴いている。一昨日は、アルゼンチンタンゴ。昨日は、ちあきなおみ。今日は韓国ベストヒットソング。アリランの穏やかな三拍子が、心にやさしい。