雪。天から降るこの世の美しいもの。
いつのまにか音もなく一面を覆い、あらゆる色彩も天地の境も消してしまう。両手を上げて空を仰げば天国にまで向かってゆけそうだ。
路肩の雪が凍りついて残るなか、今週は2本の芝居に出かけた。
グループる・ばる『片づけたい女たち』
永井愛さん作品には、会話のおもしろさの中にも、社会への啓発が見え隠れし、ずっと矢面に立っている潔さ、「覚悟」が感じられます。その台詞を力まず、それぞれの個性と絶妙のコンビネーションで紡ぐ三人の女優さんがすてきです。特にこの「片づけたい女たち」は、再演を重ね、醸造されたお酒のような味わい。みなさん10年程先輩ですが、こんなふうに命がけで、しかも軽やかに舞台を続けておられる姿を見られることは、ほんとうに幸せで、まだまだこれからと励みになります。
ヴァリアス・マダム・カプセル『ヘヴィな睦月』
ダンサーの吉沢恵さんがプロデュースした作品。2年前の冬「メゾンドフジ」でご一緒したみなさんが出演されていて懐かしい。連日、恵さんが稽古場に大鍋を持って現れ、おいしい夕食を振る舞ってくださったことを思い出します。吉沢さんのダンスは、あたたかくおおらか。でも時折のぞく「凄み」にやはり表現者としての覚悟を見るのです。
年を重ねてゆくには覚悟がいります。顔には相応の年齢が刻まれ体のあちこち不具合も起きる。でも50にならないとできない表現もあります。今年も芝居を女たちや男たちと共に作っていくのですが、雪のような包容力と落ち着きも兼ね備えながら、過激に鋭く攻めて行きたい、という野望も実はあるのです。